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ジムで身体を鍛えている人たちには、共通して2つのフィットネス目標があるはずです。それは「筋肉をつけること」、そして「筋力を増強すること」です。
両者は一見、同じように思えます。ですが、「筋力量を増やすこと」と、「筋肉を大きくすること」には違いがあります。筋力とは、単純に“動かせる重さの大きさで表されるもの”と思う人は少なくないでしょう。確かに、ある程度それは事実でもあります。が、それが全てではもありません。
もしあなたが、バルクアップ(筋肉を肥大させて身体を大きくすること)するよりも、重いウエイトを持ち上げることを優先したいのであれば、その違いを理解しておいたほうがいいでしょう。
筋力とは、総合的な筋肉パフォーマンスの側面の1つとして考えてください。ここでは、「メンズヘルス」の専門家が「筋力とは何か?」、そして「筋力のトレーニング方法について」を述べていきます。
NSCA(ストレングス&コンディショニングに関する国際的な教育団体)*1の定義によると、「筋力とは、時間の長さに関係なく、筋肉または筋肉群によって生み出される最大の力のこと」ということ。
筋力は、「筋繊維の大きさと、筋繊維を活性化させる脳の能力に大きく左右される」*2と知られています。そして筋繊維が太ければ太いほど、押したり引いたりする力が強くなるということ(この強さは、スクワットやデッドリフトのようなエクササイズで表れます)。また筋力は、筋持久力と筋パワーという2つの要素から成り立っています。
◇筋持久力とは
「筋持久力とは、筋肉がどれだけ長時間にわたって収縮できるか? ということです」と、C.S.C.S.(ストレングス&コンディショニングの国際的な認定資格)保持者のエリック・ソン氏は言います。
例えば、上腕三頭筋を鍛える軽いエクステンションを20回以上繰り返して、腕をトレーニングする日を締めくくるなら、それは「筋持久力の強化に取り組んでいる」ということになります。別の考え方をすれば、「筋肉を疲れさせ、限界に達するまで収縮させ、より長く筋肉がパフォーマンスを発揮できるように追い込んでいる」ということなのです。
◇筋パワーとは
「筋パワーは時間にも関係しますが、どれだけ素早く力を発揮できるか? ということです」と、エリック・ソン氏は言います。
高校の物理の授業を思い出してください。仕事率は、仕事量(力)をそれにかかる時間で割ったものです。そしてバーベルクリーンのような、パワーを必要とする古典的なエクササイズに置き換えて考えてみましょう。バーベルを持ち上げるには、非常に素早く、力強い動きが必要です。素早い反復でより多くの負荷をかければかけるほど、その人の筋力は高まります。
上述のように、時間や仕事量などが筋力には関係していますが、筋肉によって鍛え方が違うことに加え、筋肉の使われ方も違ってきます。例えばマラソンランナーにとっては、優れた筋持久力を持つことがより重要になりますし、パワーリフティングをする人は筋力に重点を置いてトレーニングをすべきでしょう。
ファンクショナルトレーニング(運動能力を向上させるトレーニング)ためにジムに通う人たちも、筋力を重視しているはずです。これらの異なる要素を鍛えるためには、それぞれトレーニングを調整する方法があることを知っておきましょう。
◇関節の安定性アップにつながる
「筋肉は、関節を安定させるのにも役立っています。建物のように考えてみてください、関節周りの強い筋肉は建物の背骨のような役割を果たすというわけです」と、エリック・ソン氏は言います。
「筋肉が強ければ強いほど、自身にかかる力に対抗できる」ということになります。関節の周りの筋肉は私たちが歩いたり走ったり、ジャンプしたりするときに関節から伝わる衝撃の一部を吸収する役割も担っています。これにより、関節の摩耗や損傷を最小限に抑えらるというわけです。
◇怪我のリスクを減らす
関節のサポートを強化することができれば、ケガのリスクも低くなるはずです。転倒したときなど、関節に予期せぬ負荷が加わるときに筋肉が最初の防壁になってくれるのです。つまり、筋肉が十分に強化できていれば、筋肉および骨を連結する靭帯や腱に負担を分散され、故障の可能性も軽減されるというわけです。アスリートたちの多くが、ケガ防止のために筋トレを必須にしているのはそのためです。
筋力は筋力トレーニングによって鍛えられ、その延長上に骨密度向上が促進されることもわかっています。骨密度が高ければ高いほど、骨に関する故障の可能性も低くなるでしょう。なので、これはアスリートばかりのものにしてはもったいありません。
「転倒の危険性を減らし、転倒しても起き上がれる可能性を高めることは、特に高齢者に対してメリットがあります」と、エリック・ソン氏は言います。
◇より良い姿勢をキープ
私たちの背中と体幹の筋肉は座ったり立ったりしているとき、重力の負荷に対して背骨を強く保つために連動しています。エリック・ソン氏によれば、「筋肉が強ければ、姿勢を保つのに役立つ」ということ。「より良い姿勢を保つことは背骨を健康に保ち、食べ物の消化を促進し、肺活量を向上させ、身体のバランスを整えるのに役立つ」とも言います。
◇生活の質を向上させる
「筋肉が強いと、日常生活が楽になるはずです」と、エリック・ソン氏は言います。 庭仕事で手押し車を押すときも、階段を上るときも、固い瓶の蓋を開けるときも、筋力が強化されれば生活におけるこうした場面でのパフォーマンスも、自然と向上するでしょう。
筋力を高めるには、レジスタンストレーニングが必要です。レジスタンストレーニングとは、バーベルやダンベルのような重り、自分の体重、重力など、筋肉に何らかの力で自身に負荷をかけるトレーニングです。
どのトレーニングも正しいセットとレップを行えば、筋力の増強には最適と言えるでしょう。レップ数(回数)が異なれば、筋力のパフォーマンスも異なります。例えば、レップ数の多いセットは筋持久力を鍛えられますし、素早く動かす場合は筋パワーを鍛えるのに有効です。
速いペースで動くと疲労が激しいのでレップ数を少なくすることも多く、これらのちょうど中間あたりに筋力強化の黄金律があると考えられています。筋力をつけるには、重い負荷を少ない量で行うのが良いということです。
筋力の増強に関しては、「複合トレーニングはより高い効果をもたらします」とエリック・ソン氏は言います。これらの動きは複数の筋肉群を同時に働きかけます。つまり、「1回のエクササイズで身体のより多くの部分を鍛えることができる」ということです。ここでは筋力を強化するための、おすすめの複合トレーニングをいくつか紹介します。
◇バーベルバックスクワット
なぜするのか?:
スクワットは、特に注目されている複合エクササイズの一つです。腰と膝を起点とする動きで大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、体幹を鍛え上げます。スクワット用のラックがない場合、または特定の筋群を強化したい場合でも、スクワットにはバリエーションがたくさんあるので、あなたのトレーニングをより効果的にサポートしてくれるでしょう。
そのやり方:
- バーの下に潜り込み、バーを背中の上部に置きます。首に当てないように注意しましょう。そしてバーを握りながら、大腰筋と背中の真ん中に力を入れます。
- 膝を伸ばしてバーを固定されている場所から外し、一歩下がります。足は肩幅よりやや広めに置きます。
- (へそを前に出す感覚とともに)お尻を後ろ(やや上め)に突き出し、椅子に腰掛けるように膝を曲げていきます。胸を張りながら、体幹に力を入れ続けてください。
- 太ももが地面と平行になったと思ったら、そこで止めてください。その段階でも、視線は前に向けたままです。そして、体重を足に均等に分散させて押し上げます。
セット数とレップ数:
6~8回 × 3セットを目安に行います。
◇デットリフト
なぜするのか?:
デッドリフトは、「食料品の買い物のような日常生活のさまざまな場面で役立つ、多くの人ができるはずの機能的な動作」と、エリック・ソン氏は言います。デッドリフトはヒップヒンジ(骨盤と太ももの骨からなる関節を扉の蝶番のように折り曲げたり伸ばしたりする動作)における筋力を鍛え、数種類の器具を使って負荷をかけることができます。
やり方:
- バーの下に足を位置し、肩幅程度に開いてスタートします。すねはバーの近くか、実際に触れるぐらいにします。
- (へそを前に出す感覚とともに)お尻を後ろ(やや上め)に突き出し、腰を曲げて左右の足のバーをつかみます。オーバーハンドグリップで両手で握ります。
- 腰が肩より低いことを確認します。肩甲骨を寄せて背筋を伸ばし、バーを引き上げます。
- 引き上げるとき、バーを身体に密着させます。肩、腰、膝が一直線になるまで大臀筋を絞りましょう。
セット数とレップ数:
最初は、6~8回 × 3~4セットを目安に行います。
◇腕立て伏せ
なぜするのか?:
腕立て伏せは標準的な自重トレーニングで、胸以外の筋肉も鍛えられます。このエクササイズはできる場所の制限が少なく、多くの人が日課に加えることができるでしょう。集中したいポイントに合わせてバリエーションも豊富です。
やり方:
- 両手を床につき、手首を肩の下にくるように置いて、背筋を一直線にしたハイプランクの姿勢から始めます。
- 両手を地面にねじ込むイメージです。首はまっすぐニュートラルに保ちます。
- 肘を身体から約45度離して胸を地面に下ろします。
- 一番上まで、一気に押し上げてください。
セット数とレップ数:
6~8回 × 3~4セットを目安に行います。
◇インバーテッドロウ
なぜするのか?:
背筋力をつけるために、インバーテッドロウをマスターしましょう。まっすぐな体勢を維持するには臀部の筋肉と体幹も必要となるため、背中だけでなく他の部分も鍛えられます。
やり方:
- 自分の能力に合ったバーの位置を見つけましょう。バーの位置が高ければ高いほど、この動きは楽になります。
- バーを肩幅より少し広めのオーバーハンドグリップで握ります。そして、身体を引き上げるのですが、そのときに動作全体を通して背筋をまっすぐに保つことが重要です。腹筋、大臀筋、肩甲骨に力を入れます。
- バーを胸に引き寄せることを意識します。バーに届くようにと背中を丸めないようにしましょう。
セット数とレップ数:
6~8回 × 3セットを目安に行います。
◇ランジ
なぜするのか?:
ランジはユニラテラルトレーニング(身体の片方に負荷をかけるトレーニング)に最適なエクササイズで、左右の筋力差を修正し、バランスを促進するのに適しています。手持ちの器具で負荷をかけることで大腿四頭筋、大臀筋、体幹を鍛えることができます。
やり方:
- 足を腰幅に開き、起立します
- 片足を一歩前に出し、後ろ足は膝関節が90度になるまで倒し、胸を張ります。
- 前足のかかとに力を入れ、前足を最初の位置に戻します。
セット数とレップ数:
片足6~8回 × 3セットを目安に行います。
◇ベンチプレス
なぜするのか?:
古典的なベンチプレスは、胸部を強化するだけではありません。バーを持ち上げるのは上腕三頭筋の力で、ベンチに固定するには中臀筋と体幹にを使う必要があります。 三角筋は肩全体の安定にも役立ちます。
やり方:
- ベンチに横たわり、足は地面に平らに置いてください。お尻の筋肉を緊張させ、おへそを脊髄に向かって引き寄せるようにして、体幹を締めます。さらに背骨には、自然なアーチをつくってください。これは胸を高く保ち、肩甲骨を引き寄せて固定することで、より良い安定性とパフォーマンスを実現するためです。
- バーベルまたはダンベルを、肩の上に直接置きます。息を吸いながら下げ、腕の付け根を45度に曲げることを意識してください。 前腕を地面に対して垂直に保ちます。
- 押し上げながら息を吐きましょう。
セット数とレップ数:
6~8回を3セットを目安に行います。
【脚注】
*1:FOUNDATIONS OF FITNESS PROGRAMMING
*2:Comparison between Highly Complex Location Models and GAMLSS
Translation / Kotaro Tsuji
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です
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