ビッグブラックブック

少し裏話を。今号のvisvimのページをつくるにあたり、何度か打ち合わせを重ねました。そのなかでキーワドとなったのがフランス語で言う「nonchalant(ノンシャラン)」であり、日本語に訳すなら「無頓着に」になるでしょうか。そして、その延長上にある「自然体のカッコよさ」に。

となると、重要なのが“誰に服を着せるか”。ほとんどの場合、海外から来日する人気モデルを起用してスタイリッシュさを突き詰めるのですが、今回は真逆。直球のカッコよさではなく、自然体のカッコよさを突き詰めるわけです。

そんななかで、名前が挙がったのが“三浦誠己さん”だったのです。

個人的には又吉直樹原作の映画『火花』での演技が決め手になっていて、“カッコ悪いけどカッコいい”あのリアリティと存在感は他の誰にも真似できないかと…。直球のカッコよさではない、にじみ出るカッコさが今回の内容にぴったりだと思ったのです。

撮影方法もカット数も決めず
ドキュメンタリー的に

visvim,三浦誠己
Yusuke Abe

普通、ファッションページを制作する場合、掲載する写真の枚数や、どこでどんなポージングで撮影するかを決めてから挑むのですが、今回の撮影はその設計図はなし。都内某所に三浦さんにお越しいただき、自由に動いている姿を撮影。そうすることで、上のページのような自然体のカッコよさを表現することができたのです。

自然体のカッコよさは
内面から生み出されるもの

三浦誠己,visvim
三浦誠己,visvim
Yusuke Abe

ある雑誌のインタビューで三浦さんが夢について、「映画賞や主役や有名映画に出たいという欲は一切なく、この仕事を死ぬまでまっとうして、100年後にも残っている作品にかかわりたい」と。これを読んだとき、アンダーステイトメント(緩叙法)のカッコよさって、こういうことだなと強く感じました。カッコよさの本質とは、創作するものではない…自然と生まれるもの。まさに、今回の撮影でそれを実感させてくれたのが三浦さんの“素”の笑顔かなと。

そんな三浦さんの最新作にぜひ注目

現在大ヒット上映中の『おまえの罪を自白しろ』(水田伸生監督)やディズニープラス オリジナルシリーズ「ワンダーハッチ-空飛ぶ竜の島-」はもちろん、年明けの1月2日には、NHK特集ドラマ「アイドル誕生 輝け昭和歌謡」が放送を控えています。

PROFILE
みうらまさき/1975年生まれ、和歌山県出身。1996年にお笑い芸人としてデビューした後、2003年より俳優に転身。主な代表作に、映画『海炭市叙景』(熊切和嘉監督/2010年)、『ディストラクション・ベイビーズ』(真利子哲也監督/2016年)、『火花』(板尾創路監督/2017年)、『アウトサイダー』(マーチン・サントフリート監督/2018年)、『ケイコ 目を澄ませて』(三宅 唱監督/2022年)など多数。