部屋とワードローブから見える
デニムスペシャリストのルーツ
パリにあるデニム専門のリペアショップ「SuperStitch」のオーナーであるアーサーさん。チェーンステッチで裾上げができるパリで唯一の場所としてパリのデニム好きはもちろん、ヨーロッパ中からファンが訪れます。使っているのはヴィンテージのユニオンスペシャル43200Gというミシン。
「パリのショールームに勤務する傍ら、このミシンを手に入れました。ボロボロだった機械を自分で修理して、自宅のアパートでチェーンステッチの裾上げサービスを始めたのが『SuperStitch』のスタートです」
ショップでは裾上げのほかに補修やシルエット変更なども受け付けていますが、彼がデザインする日本製のデニムアイテムも人気で、毎回入荷してはすぐに完売してしまうアイテムも珍しくありません。そんな彼のスタイルは一貫していて、デニムに革靴、そしてワークウェア。でも部屋には一着の美しいツイードのコートがかかっています。
「デニムが好きなのでカジュアルな服しか着ないと思われがちですが、実はワークウェアと美しいテーラリングが交わるところが好きなのです。このコートは私が思う世界で最高のテーラーのひとり、リッチョーネという小さな町の『サルトリア・エドアルド・コルテーゼ』に作ってもらいました。伝統的なアルスターコートをよりイタリア的な解釈で仕立ててもらったものです。もちろんミシンは使わず全て手作業によるものです」
自身でも13種類のミシンを使い、裁断から縫製までを全てパリのアトリエで手がける特別なジーンズを製作しているだけあって、職人たちへのリスペクトは相当なもの。
昨年初めて行った日本のものづくりにも魅了され、今の目標は古い織機を購入してパリで生地を織るところから始めるオリジナルジーンズを作ること。自分の好きを存分に仕事にしている彼の部屋、そして彼の幼少期のルーツを感じさせるガレージまでを見せてもらいました。
ジーンズと革靴で作る
エレガントカジュアル
ワードローブはジーンズとワークウェアがメイン。それに合わせる革靴のなかでもスリッポンが特に好きで、多く所有しているのは最初に働いた会社の上司の影響だそう。
「彼の祖母の口癖が『エレガンスは足元から』だったのです。最初の給料で買ったのはオールデンのインディブーツでした。そこからより洗練された靴に興味を持ち始め、たくさんのスリッポンを集めるようになりました。昔はスリッポンを履いていると、『おじいちゃんの靴』とよく笑われましたけどね」
▶パリらしく
コンパクトにまとめられた
アーサーさんの居住空間
アーサー・ルクレールさん(ジーンズメーカー)
フランス南西部ラ・ロシェル出身。2016年に自宅で始めたデニムの裾上げサービスが人気を呼び、2020年にはパリ6区に「SuperStitch」をオープン。デニムのリペアに加え日本製のオリジナルブランドも展開。
SUPERSTITCH
インタビュアー
関 隼平さん(ファッションインプルーバー)
パリをベースに、さまざまなショップやブランドの価値を高めるべく活動中。パリ16区に「PARKS Paris」を構え、2号店となる新ショップ「keylime Tokyo」を2023年にオープン。
※メンズクラブ2024年4月号より転載。掲載内容は発売日時点の情報です。